Sympapaのスマートホーム日記

スマートなんとかはスマートじゃない方法でつくられている

新居のスマート化: おひさまおつきさまハイブリッドエコキュートをHome Assistantで作る(1)

Sympapaです。


太陽光発電が良くも悪くも盛り上がっていますね。
我が新居でも、電気代の高騰と太陽光発電の盛り上がりに負けて4.8kWのパネルを設置しました。

そして最近は電気代の高騰だったり、余剰電力の固定価格買取(FIT)単価が年々安くなっていたり、太陽光パネルの設置から10年経って固定価格買取(FIT)期間が終了し売電単価が激減する方が増えて来たこともあって、発電した電気を「売電」するのではなく「自家消費」することに注目が集まってきています。
今後、蓄電池が普及し価格も下がって来るだろうと予想されていますが、現時点でそれより導入しやすい「自家消費策」としてここ数年で「おひさまエコキュート」なるものが登場しました。
もともとエコキュートは安い夜間電力を使って夜中にお湯を沸かしてしまい貯めておけばオトクって発想の給湯器ですが、太陽光パネルが載ってるなら昼間にお湯を沸かした方がオトクって発想のが「おひさまエコキュート」です。
昼間に沸き上げすることにより、沸き上げ時の気温が高いため沸き上げに必要な電力が抑制できるとか、夜にお風呂のお湯張りをする前提の場合は沸き上げ後お湯張りまでの気温の高さと時間の短縮によって放熱によるロスを抑制できるというメリットもあるそうです。
余談ですが、普通のエコキュートで昼間に沸き上げする方法をググると「エコキュートの時刻設定を昼夜逆転させる方法で対策している」という情報がたくさんヒットするので、昼間に沸き上げしたいニーズはかなりあるようです(笑)


と、ここまで受け売り的情報を書きましたが、太陽光発電の普及により昼間の電力が余っているため消費を昼間にシフトさせたいという電力会社の事情もありそうですので、ちょっと冷静に考えてみます。


まず、我が家の場合、2024年3月時点で存在する「政府の電気・ガス価格激変緩和対策事業」(要するに補助金)▲7円/kWhと燃料調整費及び再エネ賦課金を計算した電気の単価は、平日昼間で32円/kWh前後、週末昼間で26円/kWh前後、夜間で19円/kWh前後となっていて、FIT売電単価は16円/kWhです。夜間単価と売電単価の差は僅か3円/kWhしかありません。
エコキュートの沸き上げに1日10kWh使うとして30日で300kWh。300kWh×3円/kWh=900円。実はエコキュートの沸き上げを昼間に行い、その電力を100%太陽光発電で賄えたとしても(つまり最大で)900円/月しかお得になりません(汗
しかもそれは沸き上げに必要な電力を100%太陽光発電で賄えた場合の話であって、天気によっては一部を買電して賄うことになります。エコキュートを昼間に沸き上げ10kWh/日消費するとした場合、それに使用する電力比率の損益分岐点は発電電力:8.125kWh*となり、すなわち沸き上げ時に使用する電力が81.25%以上発電電力でなければ昼間に沸き上げすると損をし夜間に沸き上げた方が良いということになります。
(*計算 昼間に発電電力で沸き上げして得する金額: 夜間単価-売電単価=3円/kWh, 昼間に買電電力で沸き上げして損する金額: 平日昼間単価-夜間単価=13円/kWhで計算すると、8.125kWh×-3円/kWh + 1.725kWh×13円/kWh=0 )
つまり、沸き上げに必要な分の余剰電力が十分確保出来る日しか昼間に沸き上げしてもお得にならないのです。


まぁしかし補助金がいつまで続くのかはわからないので補助金▲7円/kWhが無くなった場合を計算すると、昼間に沸き上げしてお得になる金額は最大3000円/月となり、沸き上げに使用する電力比率の損益分岐点は発電電力:56.5%となります。
ここでもやっぱり、毎日固定して昼間に沸き上げした場合、天気の影響も受けてほとんどお得にならない気がします。


卒FIT後はどうでしょうか。補助金無しで売電単価が8円/kWhだとすると、昼間に沸き上げしてお得になる金額は最大5100円/月となり、沸き上げに使用する電力比率の損益分岐点は発電電力:43.33%となります。
ようやく、毎日固定して昼間に沸き上げした場合もお得になる感じがしてきたものの、それでも天気を考慮すると1000円~2000円/月がいいとこだと思いますがどうでしょう?


私も家を建てるにあたって「おひさまエコキュート」を採用しようかと悩みましたが、家を建てた工務店仕入れを得意としている三菱のエコキュートの場合「おひさまエコキュート(SRT-B466U-PV)」にすると標準のエコキュート(SRT-S466A)より機能がショボい上に数万円高くなる見積りが出てきました。更に、計算結果より「卒FITまでは昼間に固定で沸き上げすると下手すりゃ損する」という判断から、普通の夜間に沸かすエコキュートを導入しました。
そして無線LAN対応リモコン(RMCB-F6SE-T)を導入してEchonet Lite対応にし、確実にエコキュートの消費電力分の余剰電力が確保できそうな日だけ昼間に沸き上げすれば一番お得と判断しました。
まぁそうしたとしても現状では効果が微々たるモンなのでアホくさい気もしますが、補助金が無くなった時、電気代が上がった時、更に太陽光発電の普及により昼間の電力が余り夜間電力単価と日中電力単価の差が縮まった時や出力制御(世の電力が余っている場合に出力制御されて発電した電力を売電できなくなる)が増えて来た時にはその効果は大きくなってきますし、何より浪漫がある(笑)のでHome Assistantから以下のようなエコキュートの制御をしています。
名付けて「おひさまおつきさまハイブリッドエコキュート」です(笑)
・翌日の予想発電量が23kWhを超える場合は夜間の沸き上げを強制停止して翌日昼間に沸き上げする。
・翌日の予想発電量が23kWh未満の場合は夜間に沸き上げする。この場合、翌日昼間に余剰電力が1.5kWを超えて来たら追加の沸き上げをし(買電電力が0.1kWを超えて来たらその沸き上げは停止する)、次の沸き上げ時の電力を抑制する。


このシリーズでは、この「おひさまおつきさまハイブリッドエコキュート」について2回に分けて書きたいと思います。
今回は「エコキュートとHome Assistantの接続」と「発電量の予測」について書いていきます。

エコキュートの接続

エコキュートとHome Assistantの接続にはカスタムインテグレーション: echonetlite_homeassistantを使用させていただいています。
echonetlite_homeassistantはHome AssistantとEchonet Lite対応デバイスを接続できる(たぶん)唯一のインテグレーションです。
数ヶ月前にはエコキュートはサポートしていなかったのですが、githubのissueにコメントしたのをきっかけにサポートしていただきました。ありがとうございます(^^)
インストールはHACSで”Echonet”で検索すれば出来ます。
github.com


エコキュートを接続すると、以下のような31個のエンティティが現れます。


制御系はこんな感じになっています。


今回の「おひさまおつきさまハイブリッドエコキュート」に必要なのは、沸き上げを制御する"Automatic water heating setting"、お湯の残量である"measured_amount_of_water_remaining_in_tank", 沸き上げ中か否かのステータスである"Water heater status"で、他に必要なのは太陽光パネル側のステータスになってきます。
沸き上げを制御する"Automatic water heating setting"では”Auto”,”Manual”,”Stop”が選択でき、”Auto”はエコキュートのリモコン表示でいう「おまかせ」、”Manual”は「満タン」ボタンを押したのと同じで、”Stop”ではリモコンに「長期停止」と表示されます。


他にも、累積消費電量である"measured_cumulative_power_consumption"も使いそうですし、外出先から遠隔でお風呂のお湯張りをしたり(まぁこれは浴槽を掃除して栓がしてあることが前提ですが)とか色々できそうですね(^^)

■発電量の予測

「おひさまおつきさまハイブリッドエコキュート」を実現するためには翌日十分に発電すると予想される場合に夜間の沸き上げを停めなくてはいけないため、翌日の発電量を事前に予想することが必要になります。
ざっくりならば天気予報で良い気もしますが、世の中には、家の場所やパネルのスペック・方位・角度などを設定すると発電量を予測してくれるサービスがあります。そしてHome AssistantにはそのサービスのAPIを使って予想をエンティティとして取り込めるカスタムインテグレーションがあります。


私が利用しているのはSolcast solarというサービスです。機能制限はありますが無料アカウントで今回の目的は果たせます。
solcast.com


そして、Solcast solarとHome Assistantの接続には、こちらのカスタムインテグレーションを使用しています。
github.com


[手順]
1) まず最初にSolcast solarのアカウントを作ります。無料アカウントで問題ありません。
2) Solcast solarで家の場所、パネル容量、方位、角度、力率係数を設定します。パネルが2カ所以上に設置されている場合の設定も出来ますがそれはちょっとややこしそうです。
3) Home Assistantに"ha-solcast-solar"をインストールしHome Assistantを再起動します。(Solcast SolarはHACSで"solcast"で検索するだけでインストール出来るのでその方法は割愛します。)
4) [設定]>[デバイスとサービス]>[統合]と進んで、[統合を追加]を押します。
5) "solcast"で検索して、Solcast PV Forecastを選ぶと、APIキーの入力を要求されます。
6) Solcast solarのページへログインし、右上のアカウント名をクリックするとメニューが表示されるので”Your API key"を選びます。
7) APIキーをコピーして、5)でAPIキーを要求されたところへ貼り付けます。


これで設定は完了です。
以下のようなエンティティが現れますが、多くの場合は「明日の予測」「今日の予測」くらいしか使わないかなと思います。
我が家における「明日の予測」を見ている限り、予測が20kWh未満の時は数値の信頼性は低そうです。
特に予測値が10kWh未満では実績が予測値の20%くらい~予測値の間でバラツキ、予測値が10kWh~20kWhでも予測値の40%くらい~予測値までばらつきます。
一方、予測が20kWhを超えて来ると、予測値の70%~予測値くらいのバラツキに収まってそうです。
なので、しばらく予測値と実績を比較した上で、オートメーションなどに利用する必要があるかなと思います。


■まとめ

今回は「おひさまおつきさまハイブリッドエコキュート」をHome Assistantを使って実現するための「エコキュートの接続」及び「太陽光発電量の予測」について書きました。
ってか前置きの方が長くなりましたが(笑)
次回は、これらを使ってエコキュートを自動制御するオートメーションの作成について書いていきたいと思います。
それでは。つづく